Titus Andronicus 2006.05.02

『タイタス・アンドロニカス』
ちょっと忙しくて、感想書けなかった・・・
行って参りました。降りしきる大雨の中。笑
正直、なんで自分が行く日だけこんな大雨なのかと、かなり凹んでました(^^;
e+の当日券でぎりぎり確保したお席は3階のいっちゃん後ろでした(^^;
でも、会場がわりと小さめだったので、役者さんの表情もまぁ、なんとなくですが見えました。
とりあえず、徒然と感想を述べたいと想います、はい。


http://www.saf.or.jp/performance/geijyutu/05_45.html



にはを、にはを、これが報いだ。

(公式パンフより)


ローマ帝国皇位継承争いの裏側を、蜷川流で見せられた感じでした。


・舞台装置的なこと
 装置をほとんど白で統一・・・これは、なんだか不気味さが増すような気がしました。反射率がとても高いので、舞台上がすごく明るくて、観やすいと言えば観やすかったのですが。そのかわり、照明を落とすと一気に真っ暗になるので、それがすごく気持ちよかったです。
 血を象徴する赤い糸・・・う〜ん。これは、前半の舞台ではすごく気持ち悪かったです。もちろん、生々しさはそこまで感じないのですが、ストーリーがのっかると、綺麗・・・というよりは、「うわぁ、なんかぶら下がってる〜」的な感じを強く受けました。後半は、ちょっと無理やりな部分をちらちら見てしまったので、逆にコミカルに感じてしまった。きっとこれは角度の問題ですね。
 森の中・・・白い蓮の葉、コレ、すごい欲しい。蓮にかかる照明の感じがすごく好きで、持って帰りたかった。木漏れ日と真ん中に聳え立つ大木。それを掻い潜りながらキャストが右往左往。そのたびに蓮が揺れて、それが結構好きでした。


・ストーリーで印象に残った点
生声で勝負って、素敵ですv やっぱり演劇はこうでなくちゃ☆
 始まり・・・演出家が開始時間の声掛けをするなかで、俳優は発声練習や動きのチェックなどを行っていましたが、私的にこれかなりアリです。そういうのも演出家の「よぉーい、スタート!」でガラッっと空気が変わり瞬間的にキャストがその役に成りきる所がとても心地よいと言うか、気持ちよかったから。蜷川さんが仰っていた“素の俳優”の見せ方に、魅せられちゃいました。
 最悪の事態・・・ラヴィニアが強姦され、タイタスの息子2人が死刑になり、ルーシアスは国外追放、おまけにタイタスは片手を失う。どん底のアンドロニカス家がお互いを慰めあい、絶えることのない涙を流し続ける。その悲しみが徐々に憎悪に変わり、段々とタイタスの様子が変貌していく。ここのルーシアスが4人に別れを告げるシーンで、私自然と涙を流してしまいました。唯一無、意識に涙を流していたシーンです。きっと、とうとう始まってしまうタイタスの狂気を予感して悲しくなってしまったのだろうな。
 最後の晩餐・・・とにかく出てくるキャストさんが多くて、でも、やっぱり吉田さんはスゴイ。表情はちょこっと読み取れなかったのですが、半狂気じみた台詞の言い方がやっぱり目線を惹き付けます。薄ら笑い的な感じが良かった。んでもね、人肉パイで皆さん驚いて一気にテーブルやら食事やらがバァーっとなるのに、タモーラの処だけあんなに何にも動じてないのは、なんとなく違和感を感じてしまった。正しいのは分かるのだけど、あまりに他のキャストの驚きがすごいもんで、「タモーラ、どんだけ魔性だよ」とか一人突っ込みを入れてしまいました。それと、どんどん殺していくところ。「お〜っ、これこそシェイクスピア悲劇や〜」という感じがしました。殺して、殺して、殺して・・・こういう殺戮がローマ時代の象徴なんだろうなぁとか勝手に想像してました。



 タイタス・アンドロニカス役  吉田鋼太郎 さん
さすが貫禄、実力共に高い役者さんのです。台詞も聞き取りやすいし、何しろ表情が観やすい〜。更に全身の動きで憎悪・悲惨さ・無念さを感じられました。息継ぎの無いながーい台詞や、早口でガーっと喋る台詞、心の中で喋る台詞、きちんと聞き取れました。抑揚がある喋り方がなんとも良かったです。


 タモーラ役  麻美れい さん
まさに艶女な悪女、でした。最後の最期まで憎たらしかった。でも、役者としてはすごく正解なんですよね。冒頭部分だけ“母”の顔でしたが、息子を殺されてからもうなんだか人間の域を超えてる感じがしました。“女”を武器にどこまでも登りつめられる、まさにそんな感じ。色っぽかったし、綺麗だし、でも心の奥底に秘めている憎悪の念はメラッメラに燃やし続けている。それが、最後の晩餐の息子達の人肉パイを食べたと告げられたあの表情を生み出したのだと想うと、ちょっと切なくなってきちゃいますが。でも、憎いわ。


 エアロン役  小栗旬 さん
びっくりしたー。この一言に尽きます。舞台役者として、小栗さんがこんなん成っていたとは。*1まず、その声に驚きました。「え!?こんな声じゃない!!」と一瞬自分の耳を疑いました。すごいなー。すっかり舞台人。さすが蜷川ワールド。肌の黒さと、3階にも伝わってくる“若さと悪のギラギラ感”がたまりませんでした。何が素敵って、あの衣装。赤い重たそうなマントをバッサバッサやる御姿に魅了されてしまった。


 この舞台の中で一番好きなシーンが小栗さんのトコなんです。
タモーラとの子供の話を聞き、動揺する息子2人を従え、更なる悪事を考える。愛おしそうに自らの子供を抱え、マントをバサーッと翻し、舞台中央のドアに消えていく。この時、エアロンの後姿に当たる照明以外が全部消えるんです。赤いマントだけが眼に映る。そして、フッっとその照明も消える。もぅ、ここ超大好きっっ!

 ここでエアロンに惚れてしまいました。ほんとに素敵なんだものー。


 ラヴィニア役  真中瞳 さん
ごめんなさい、ちょっと遠すぎたー。最初のほうはあんまり関心が向きませんでした。森の中のシーンなんか、台詞聞いて「ちょっとコイツいけ好かない」とか想ってしまった。何でも手にいれている感をヒシヒシ感じました。だからこそ、強姦された後の方が迫力あったんだろうなぁー。森の中を彷徨うシーンや、兄達の生首を見て声にならない声で泣き叫ぶシーンはグッっときました。が、やはり遠すぎたー。表情がもっと観たかったです。かなり残念。ただ、ちょっと怖いなと想ったのが、タモーラの息子達の喉を引き裂くシーン。あそこだけは、タモーラよりも怖ろしくみえました。眼がいっちゃってた。


 マーカス・アンドロニカス役  壌晴彦 さん
この人の落ち着きある声がすき。タイタスより、全然年上に見えるんですけど。壌さんも仰ってましたが、きっと彼が「報告者」だから、誰よりも落ち着いてちょっとストーリーテイラー的な位置にいるように感じたのかもしれません。怒りに荒れ狂うことも無く、けれど深い悲しみに包まれている・・・なんだか言ってる自分でも難しい役どころだなぁと想ってしまいました。にしても、パンフレットと舞台上の顔つきが全然違うよー。


 サターナイナス役  鶴見辰吾 さん
すみません、最初、ぜんぜん鶴見さんだって気付きませんでした。鶴見さんよりもバシエイナス役の横田さんの方がなんか見たことあるな〜と想って悩んでたもので。サターナイナスの台詞から舞台が始まるんですけど、顔を確認するより、この二人の役柄は一体何だ?*2と想って必死に台詞で理解しようとしてたんで。サターナイナスの役どころってなんとなくタモーラのせいで少し霞んでしまうのですが、出るとこ出るのが皇帝なので、あの存在は無くてはならないものですね。*3


 ルーシアス役  廣田高志 さん
なんつったって、泣き所ですからv正義感が強く、人民からの支持も高い。まさに皇帝にふさわしき人。途中で国外追放されてしまうのが残念でならなかったです。タイタスに「この国を出ろ」と言われて、弟達の生首と悲しみの頂点にいる家族を見送る姿に、もぅボロボロでした。あれは切なかったなぁ・・・。


 ディミートリアス役、カイロン役  大川浩樹さん、鈴木豊さん
最初の登場から、悪役臭がプンプンしてました。みるからに悪そうなんだけど、ちょっと抜けている感じ。タモーラとエアロンにあんなにも簡単に使われているようじゃ、ダメっすよ。とか突っ込みたくなってしまった。ただ、森の中で赤い布だか糸だかを纏っていたのは何故?あれは血なのでしょうか。。。


 少年ルーカス役  桝井賢斗 くん
開始前からちょこちょこ動いてて「かわいいなぁ〜」と想ってました。年齢確認したら、11歳・・・すごっ。まだまだ未知数の子役さんです。台詞に「本当にこんな事想うの!?」とか言う点はなんこかありましたが。ラストシーン、タモーラとエアロンの子供を抱きながら叫ぶシーン。あれは、なんつーか、うん、難しいね。あたしは、「子供使っちゃうのかー」と想ってしまいました。ちょっと残念。




 この物語の不思議なところは、前半はすんごい重いんですよ。ずっしり、という感じ。気持ち悪くなるくらい、奥底にくるんです。でも、後半、ぜんぜんそんな事ないの。むしろ、タモーラの息子二人が死ぬシーンなんか、けっこう綺麗だなと思えるくらいに軽い。なんなのでしょう。グレートさんの登場にもビックリしたし。後半のほうが確実に笑いが多かったですよね。これは、わざと?だから、ラストシーンで屈折しちゃったのかも、ワタシ。


 観客ですが、男性の方多かったっすー。休憩時間に、トイレ並んじゃうくらい。
出てる役者さんも幅広いせいか、老若男女問わず。蜷川フリーク的な人たちも何人かいらっしゃいました。いやぁ、大学で演劇の授業を受けるとですね、いるんですよ“蜷川演出大好きです!”という人達が。あのワールドが好きなのでしょうね、きっと。完璧主義者的な厳しくも熱い情熱溢れる演出家、さすが世界のニナガワさんです。

*1:若干、失礼

*2:パンフを読まずに観たので

*3:ただ、ちょっと騙されすぎ〜と想っちゃいましたが