【血の婚礼】5月6日マチネ

行ってまいりました。今回の舞台は、最初で最後の参戦。*1最初から諦めモードだったので、いまいちカウントダウンもせず、普通にGW遊んでたりしました。へへ。
でも、それが良かったのか悪かったのか。想ったいたよりは重くは感じませんでした。もしかしたら、舞台だけれど現実味があって、それでいて出演者の方々がより役を演じていたからかもしれません。*2これはあくまで個人的な解釈ですが。

一応、畳んでおこうかと思います。


 ・舞台装置とか
正直、舞台セットの少なさには驚きました。しかし、舞台が始まると、この方がより芝居が際立ってみえました。布の使い方とか、絶妙。あぁいう照明の使い方、大好きです。シルエットとかがすごく映えるんですよねぇ。あと、最後の砂の演出&ひらひら舞い落ちてくる赤も好き。どうしても、“スペインの劇=赤”という所に落ち着いてしまう自分ですが、やっぱりこの舞台で“赤”という色はとても重要だと思います。<追記>あの、ドォォォォンっていう音は、あの劇場だから出来る事かもしれない。ジャ○ーズ御用達でもあるし、効果音の響く感じがけっこう他の劇場と違う感じがします。

 ・セリフとか
正直、一回では何を言ったのかあまり印象に残りません(汗 人の動きを目で追うだけで精一杯。ただ、やはりこの舞台は噛んだり、言いなおしたりするとすごく違和感を感じてしまう。これは、原作を読んでるからいえるのかもしれませんが、ある程度登場人物の感情や話の流れが分かるから、それを壊されるとなんだか妙に腑に落ちない。わりと感情がストレートな演劇な分、よけいに気になってしまうのかも。今後に期待です。

 ・【血の婚礼】という舞台
いがいに、いや、ほんと意外だったんですけど、かなり普通にみれました。もちろん、真ん中に渦巻いているグチャグチャっとした想いは個々に複雑なのですが。何と表現していいか言葉が見つからないのが悔しい。“分かりやすい”と言うのがちょっと違うけど、一番近いかな。ロルカの詩って、もっとこう幻想的というか、ちょっと人間離れしている部分も多々あったように感じたのですが、白井さん演出の「余計な部分を出来るだけ落とした」からこうなったのかな・・・なんて考えたりもしました。とっても人間的。鬱屈した社会の中で、もがき苦しみ、耐え切れなくなってしまった彼ら下した決断。本能のままに生きるという人間の動物的な部分。ある意味、潔い。

 ・レオナルド(森山未來
根が優しすぎたのかな。レオナルドって。一途で素直過ぎたのかもしれない。きっと、花嫁の事を本当に愛してて、だからこそ、自分が倖せに出来なかった事をずーっと悔やんでて。どうしようもない感情のはけ口を見つけられず、自分の妻や子供でさえもきちんと愛する事が出来ない。苛立ちを常に身に纏いながら、同時に悲しみも背負う。これじゃあ、笑う事なんて出来ませんよね。彼の真ん中のさらに真ん中、芯の部分が良いからこそ、それを覆うものがよけいに濁流のように荒れてしまったのかもしれない・・・・・そんな風に思いました。
<追記>花嫁とのキスシーンも、濃厚どうとかよりは、本当に体当たりな印象を受けたので、“好き勝手に”というお二人の言葉にすごく納得。常にお互いの感情をぶつけあってる姿は、もどかしいし、なんだか居たたまれなかったです。

 フラメンコ、さすがにまだのれなかったなぁー。感情の波に。格好良いとは想ったけど、想ったけど、やっぱりついていけなかった。悔しいー。あの、床を蹴る部分とか、すごい好きなんだけど。馬っぽいんだけど(苦笑)くやしいなー、ほんと。未來さんの事を言うなら、たまぁに「あ、未來さんっぽい」なんて想ってしまう所もあったりして。セリフの言い方とか、ステキな所為もたくさんあって。良かった☆(笑)フラメンコ踊る時に、腰の位置が動いてなかったのはすごいと思いました!!

 ・花嫁(ソニン
女ってずるいなー、そう想ってしまいました。花嫁は賢い女じゃなかった。引きずっていた恋に翻弄され、常に葛藤し続ける。愛している花婿と結婚しても、やはりレオナルドに心惹かれるている自分を拒めない。これって、演じるのがすごく難しそう。でも、現実世界でもぜんぜんいそうな女。ただ、花嫁の場合はしがらみというか、彼女を押さえつけているモノがすごく多くて、それに押しつぶされている彼女は、とても不憫だった。あの時代では、甘いといわれてしまうのかも知れないけれど。ソニンちゃん、とっても聞き取りやすい声かわいい声でした。

 ・花婿(岡田浩暉)
原作と違って、人間が演じるからでしょうか、妙にだいぶ始めの方から「この人なんか怖い」と想ってしまいました。レオナルドとかよりよっぽど腹の中じゃ何考えてるかわかんない。きっと、母親の存在も強く影響しているんだと想うけど。あんなに四六時中暗示のように「殺された」とか「死んだ」とか言われ続けたら、誰だっておかしくなってしまいます。レオナルドと花嫁が逃げて、血眼になって探す花婿の姿、あれが彼の本当の姿だって言われるのが一番納得いきます。

 ・レオナルドの妻(浅見れいな
倖せになることを半ば諦めかけている自分と、倖せにならなくてはいけないと言い聞かせて生きている自分。か弱そうに見えるけど、彼女は強い人間だと思います。レオナルドとの糸を必死に繋ぎとめようとしている姿がそう想わせるのかもしれない。レオナルドの行動に、不安を感じながらも、ぐっと耐えて胸にしまい込む。やっぱり、彼女は強いな。時代を生きていける人間です。

 ・黒い男(新納慎也
「足長いなー」と思いました。すみません、新納さんだけちょっと役から離れた感情を最初に抱いてしまって。彼の場合は、抽象的な役柄上、どんな人間だったとかの感想よりも、彼の動きひとつひとつがもぅなんか、複雑だし、綺麗だし、そっちに魅入ってしまって。フラメンコを踊ってる姿とかね、格好良かったです。

 ・少女/月(尾上紫
少女は無垢で、怖いもの知らず。でもなんか妙に大人っぽい。月は、こわいーーー。“ジワジワくるこわさ”と言うのでしょうか。何とも言いがたい舞いを披露してもらって、ますます抽象的加減が増して・・・・こわかったです。<追記>特に、黒い男とのカラミがなんかすごくエロティックというか、人間離れしていて、踊り?仕草?での訴え方がすごく強かった。

<追記>
 ・女中(池谷のぶえ
原作では、すごく嫌味ったらしいというか、いまいち花嫁の事も好きじゃないのかなーと想う部分が垣間見えて、なんだかあんまり好きになれなかったのですが(苦笑)劇中では、駄々っ子娘を持つ母親の代わりを見事にこなしていたように思えます。本気で怒ってるし、レオナルドから守ったり、彼を一瞥する眼は“母親”っぽさが出てました。花嫁が本音をぶつかられる唯一の女性だったのかな。

 ・花嫁の父(陰山泰
花婿の母とのやり取りはすごいですねー(笑)お父さん、頑張って!!と言いたくなる。しかし、男としてはどうだったんだろう・・・妻から愛されなかったという過去が、彼にどんな影響をもたらしたのか。なんだか“娘を愛しているんだ”と必死に自分に言い聞かせているようにも見えました。“家”とか“男として”という言葉の印象が強くて、花婿の母とのやり取りも、自分たちが全面に出ていて、どうも子供達がかすんで見えちゃうんですよね。

 ・レオナルドの姑(根岸季衣
レオナルドの妻の気持ちを、手にとるように分かっている姑。けれど、彼女は娘に必死に耐えるように言い聞かせる。女として、この地に根付く事を押し通してしまうのは、やはりあの時代だったからなのでしょうか。きっと、彼女も似たような過去を過ごしてきて、耐え忍ぶ事が美徳とする世界に閉じ込められてしまったのかもしれない。劇中で、唯一歌を披露する根岸さん。根岸さんの歌声、好きです。こう、暗い感じのやつが結構ツボです(苦笑)

 ・花婿の母(江波杏子
この舞台で一番強烈で、一番抱えているものが大きく、けれど誰よりも強い人間。夫を愛し、子供達を愛し、彼らの死を目の当たりにした自らの境遇までも愛している。あの地に根付き、一生を終えることを自らの誇りというか、支えにして生きていこうとする女性としての彼女は、なんだかとても居たたまれない。彼女が発する言葉の節々に、自分が選んだ道は正しいんだという、強い想いを感じました。

 ・音楽 (渡辺香津美
素敵!!!生演奏が聞けてかなり良かったです!こればっかりは、CDとかの音楽じゃ満足できない!出演者との絶妙なリンクの上に成り立つ彼の演奏は、ほんとうに良かった!!彼の眼差しの先にいて、彼の奏でるギターとセッション出来る未來さんがすごい羨ましい!(笑)劇中では、もっと大柄な人かと想っていたのですが、他の共演者の方々と並ばれると、意外にそうでも無い事が判明。ちょっとビックリしました。んー、でもほんと素敵でした!!

 ・ラストシーン
本当に、これは家に帰ってパンフを見てもすごく納得したのですが。の舞台だな、と。主役には悪いけれど。劇中で、際立つのは常に女性の姿。スペインという地が、あそこまで女性とリンクしてしまっていいのかどうかは分かりませんが、やっぱり女の舞台です。最後に残された女達の、どんな状況になろうとも生きていかなくてはならないという叫びのようなセリフ、時間が立てばたつほど、ずっしりきます。

 ・カーテンコール
えっと、確かにコレで救われているのかも。多少なりとも。でも、あんまり嬉々としているようにも見えなかったんだよなぁー、主演も(汗)それだけ、重たいという事なのかもしれません。でも、これは回を重ねるごとに感情がもっと乗ってくる舞台だと想うので、むしろ千秋楽のカテコが一番良い状態であって欲しい。全員が解放されていることを切に願ってます。


 ・全体を通して
この舞台は、観終わってから時間がたてばたつほど、いろいろ重たいものが押し寄せてくる舞台かも。現に、見終わった後よりも、こうやって思い出しながら文字を連ねている時の方がはるかにズゥーーーンとしちゃいます。よくないな、これは(苦笑)出演者一人ひとりの想いに近づけば近づくほど、どうしても凹み気味になってしまう。時間差攻撃の舞台ですね。やだなぁ、これをずっと背負って演じ続けるの。大変厳しい。なんだか胃がムカムカしてきました・・・しんどいなぁー。千秋楽までにぶっ倒れないことを祈るばかりです。

*1:今のところ

*2:あと、たぶん蜷川さんの舞台の影響?