朗読劇 「天切り松 闇がたり」

http://www.stagegate.jp/future_09.shtml

ちょっとしたお知り合い(そう呼んで良いものか・・・)のご好意により、勉強も兼ねて当日お招きいただきました。
きちんとした朗読劇は初めて。しかも、最前という、なんとも緊張する御席。
一緒に行った友人と、ドキドキしながら観劇しました。


ネタバレありの感想です。


これを、朗読劇と呼んでよいものか・・・。
浅田次郎さん著「天切り松 闇がたり 第一巻 闇の花道」(集英社刊)
この本を、すまけいさんが朗読し、ストーリーが進む演劇です。
 なぜ、朗読劇と呼んでいいのか迷ったかというと、その他の出演者の存在があるからです。
 出演者は全部で3人。すまけいさん、鷲尾真知子さん、増田英治さん。加えて、音楽・演奏で藤原道山氏。
 著名な盗人「天切り松」。そして、彼が現れたのは囚人達がいる留置場*1。老人は、六尺四方*2にしか聞こえないという夜盗の声音「闇がたり」で、ゆっくりと語り始めた・・・。
時は大正、彼が幼少の頃に里子に出されたのは、有名な盗賊「抜弁天 目細の安吉」一家。そこで彼が出会った「粋」な人々と過ごした日々の一つを天切り松(すまけい)が聞かせます。



イマジンスタジオは元々音楽収録などに使われるため、仮説舞台での上演(つい立のようなものと椅子と机のみ)客席は刑務所をイメージさせるゴザが二列しかれ、後ろは椅子が並べてあります。


上演開始のお知らせ後、場内が真っ暗に。そして、道山氏による尺八の音色が場内に響きます。
すすっと黒子(増田英治)が登場し、つい立てを並び替えます。


 横のカーテンが開き、貫禄のある歩きを見せながら登場する天切り松。ゆっくりと席につき、黒子に出されたお茶をすすり、アドリブなのか演技なのか分からない演技をされ、観客の笑いを誘う松蔵。尺八に催促され、しぶしぶ語り始めます。
  ・大半はすまけいさんによる一人芝居です。途中、黒子や尺八と絡んだりしますが、前半はほぼ一人芝居。後半、安吉一家の一人、振袖おこん(鷲尾真知子)が登場します。ここからが面白い。すまけいさんはそのまま朗読劇を続けるも、おこんとの会話が成り立ちます。すごく不思議な感じ。


 後半、すまけいが演じるのは山縣有朋*3。おこんは彼の金時計をもぅ1度掏ろうとし、有朋に気付かれる。奇妙な出会いから、二人は惹かれあっていく。
  ・鷲尾さんが登場した事により、奇妙な二人芝居が始まります。おこんは見えない有朋に話しかけ、演技をする。すまけいさんは声だけで有朋を演じます。


 「粋」だと思ったのは、六尺槍のシーン。 命より大事だと有朋が言ったのを聞き逃さなかったおこん。有朋を上手く手玉に取り、彼が「お前に惚れた。・・・なんでも(命さえも)くれてやる」と言うと、「六尺槍が欲しい」と切り出す。おこんは見事、有朋が命よりも大事にしてい六尺槍を授かり、館をあとにする。
  ・おこんは有朋の心までも盗んだ。そして、彼を愛しながらも、振袖おこんの名に恥じない盗みをした。感動しました。有朋の悔しそうな台詞が、なんとも言えず。


 物語の最後、おこんが有朋の葬列に奔り寄って、六尺槍を彼の棺とともに埋葬してくれるように懇願する。
・鷲尾さんの迫真の演技です。目に涙を浮かべ、必死の演技をする鷲尾さんに釘付け。


 葬列を見送り、頭を垂れたままのおこん。しかし、親分の「足を洗っても・・・」という言葉ですっと立ち上がり、吹っ切った表情で「振袖おこん」の継続を言い放つ。
 ・なんとも格好良いじゃございませんか。なんて粋な女性なんでしょう。格好良いなぁ。ほんと。



 抜けているところも多々ございますが、とりえあずレポはこれが限界。

観劇し終わった後、ちらっと鷲尾さんにご挨拶(しかも少し喋れてしまったv)しましたが、役者さんってやっぱりすごいです。きちんと切り替えてらっしゃって、もぅさすが、素晴らしい、と言うしかないです。
小さな劇場でしたが、照明による演出。しかと勉強させていただきました。個人的には、木漏れ日のように映し出す光がお気に入りでした。

*1:観客はそこの囚人という設定

*2:約3.3㎡

*3:実在した政治家・軍人